ここでは、狭山市が進める入曽駅周辺整備事業を5つに分けて詳しく説明します。

5つの要素から構成される入曽駅周辺整備事業の全体像。計画は令和4年(2022年)4月現在のもの

1.東西の駅前広場

1つ目は、東口と西口の駅前広場の整備です。

東口は、旧武蔵野銀行(入曽支店)前の道路(県道225号入曽停車場線)を挟んで東側、茶農協があった周辺に駅前広場が計画されています。広場のロータリーには大型バス1台、タクシー1台、身障者用1台分の乗降場所と、大型バス1台、タクシー5台分のプール(待機所)が設置されます。東口駅前広場と旧武蔵野銀行前の道路(県道225号入曽停車場線)の間は自動車も歩行者も直接行き来できず、その代わりに新しく整備されるアクセス道路を使うか、歩行者は旧茶農協横の曲がりくねった路地(市道B299号)を経由する必要があります(市への問合せより)。

西口は、現在の西口駐輪場(市営第11自転車駐車場)の場所に駅前広場が計画されていますが、ロータリーの規模は東口に比べて少し小さなものになります(乗降場:小型バス×1台・タクシー×1台・身障者用×1台、プール:タクシー3台)。

現在の西口駐輪場は廃止され、市が代替地を検討中で、市議会でも取り上げられています[1]。代替の駐輪場の候補として西武鉄道や公共施設用地、民間にも打診しているようですが、いずれも有料になる可能性があります(市への問合せより)。また、駐輪場の場所が分散していて利用者が空きを探すのが大変になることも考えられます。

東口駅前広場乗降場プール
directions_bus
バス(大型)
1台1台
local_taxi
タクシー
1台5台
accessible
身障者
1台
予定されている東口駅前広場の機能(『入曽駅周辺整備事業 基本計画』[1]に基づく)
西口駅前広場乗降場プール
directions_bus
バス(小型)
1台0台
local_taxi
タクシー
1台3台
accessible
身障者
1台
予定されている西口駅前広場の機能(『入曽駅周辺整備事業 基本計画』[1]に基づく)
東西の駅前広場の計画と東口駅前広場の歩行者の動線
東口駅前広場が整備される予定の茶農協跡地などの敷地
曲がりくねった路地(市道B299号)
東口駅前広場と旧武蔵野銀行前の道路(県道225号入曽停車場線)をつなぐ曲がりくねった路地(市道B299号)。原則、駅前広場の敷地境界は柵で仕切られるが、写真の範囲のどこかに歩行者が出入りできる切れ目を設けるよう設計が進められている(市への問合せより)
広大な敷地にたくさんの自転車が停められる西口駐輪場
西口駅前広場が整備される計画の西口駐輪場(市営第11自転車駐車場)

2.アクセス道路

2つ目は、東西の駅前広場にそれぞれつながる東口と西口のアクセス道路の整備です。

東口では、おおよそ入間小学校跡地の西側に沿うように、現在のはんしん(飯能信用金庫入曽支店)と藤月堂前を結ぶ南北方向の東口アクセス道路が新設されます(区画道路1号)。この道路は東口駅前広場や誘致された複合商業施設に出入りするための需要の多い道路であり、既存の道路との交差点で混雑が予想されますが、信号機や右折帯は設けられません(周辺の信号機のタイミング調整のみ)[2]。東口駅前広場は、東口アクセス道路の真ん中付近に接続する予定です。

西口では、現在の西口駐輪場から南に通じる道路(市道B661号)が拡幅されて西口アクセス道路となる計画ですが、用地の調整が進んでおらず拡幅の目途は立っていません[3]。これら東西それぞれのアクセス道路は両側に2.5m幅の歩道が付いた幅員12mの規模になる計画です。

また、周辺の一部の道路も拡幅や歩道整備が行われます。

駅東側にあるつつじ通り(県道50号所沢狭山線)は、入曽駅入口交差点(田辺新聞店そば)から入曽交差点(金剛院そば)の間で北行方向の右折レーンが延長されます[2]。また同じ区間には複合商業施設の出入口が設けられるので、それに伴ってゼブラゾーンの位置も変わります[2]。現在のはんしん前の道路(市道B296号)は、入曽駅入口交差点(田辺新聞店そば)から現在のはんしんの前までが北側に拡幅され、歩道が整備されます。ただし、この拡幅用地も調整中で完成が遅れる可能性があります[3]

現在の西口前の道路(市道B313号)は、西口アクセス道路との丁字路から茶つみ通りとの交差点の区間で、北方向に拡幅する構想があり、これから関係機関(警察など)との協議に入ります

一方で、旧武蔵野銀行前の道路(県道225号入曽停車場線)は駅東側の中で特に狭くて交通量が多いにもかかわらず入曽駅周辺整備事業の対象ではなく、新たな安全対策(拡幅や交通規制)は一切ありません。また、入曽駅南の踏切(新所沢駅12号踏切)は幅が狭く歩行者や自転車と自動車の接触が心配されますが、改良の予定はありません

東西のアクセス道路整備と周辺道路の拡幅計画。関係者との調整状況は令和4年(2022年)4月現在
令和4年度(2022年度)になって新設工事が始まっている東口アクセス道路(区画道路1号)。南方向(写真奥)の延長線上にあるのは現在のはんしん(飯能信用金庫入曽支店)の建物
東口アクセス道路(区画道路1号)の北端が接続する予定の茶つみ通り(県道8号川越入間線)藤月堂前。交差点では入間方面(写真手前)からアクセス道路への右折車が予想されるが、信号機や右折レーンは整備されない
西口アクセス道路として拡幅される計画の西口駐輪場から南に通じる道路(市道B661号)。現時点で実現の見通しは立っていない
拡幅予定の現在の西口駅前の道路(市道B313号)。写真中ほどの丁字路から西方向(写真奥方向)を北側(写真右側)に拡幅する計画で、関係者との協議はこれから始まる
事故が多発している旧武蔵野銀行前の道路(県道225号入曽停車場線)は拡幅されず、危険性は今後もほぼ変わらない。ここは、入間野中の通学にも使われている
道幅が狭く交通量が多い入曽駅南の踏切(新所沢駅12号踏切)。この踏切の改良は計画されていない。ここは、南小の通学路にも指定されている

3.東西自由通路

3つ目は、東西の駅前広場を橋で結ぶ東西自由通路の整備です。新設される入曽駅の橋上駅舎はこの自由通路に接続します。この自由通路は、入曽駅だけでなく旧武蔵野銀行前の道路(県道225号入曽停車場線)もまたぎます。この自由通路は東西の駅前広場(地上)と高低差があるので、エレベーター1基、エスカレーター上り1基下り1基がそれぞれの広場に接続する両端部に設置されます。

東西自由通路は、誘致される複合商業施設(イオンそよら)まではつながっていません。さらに、この自由通路の位置は茶つみ通り(県道8号川越入間線)に近すぎる中途半端な位置にあります。市は、駅の東西をつなぎ入曽地区を一体化してにぎわいを創出するとしていますが、入曽の西側や南西側から東側へのアクセスは昇り降りが不要な踏切の利用が便利です

東側西側
stairs
階段
1か所1か所
escalator
エスカレーター
2基
(昇り降りの両方)
2基
(昇り降りの両方)
elevator
エレベーター
1基1基
設計中の東西自由通路の機能(狭山市議会建設環境委員会の報告[4]に基づく)
東西自由通路の位置と線路を越える経路の比較
東西自由通路が計画されている場所。エフズホール(青い建物)の北側(写真手前)を東西方向(写真左右方向)に建設される。自由通路は写真の道路(県道225号入曽停車場線)もまたいでしまうため、この道路から直接利用することはできない

4.橋上駅舎化

4つ目は、入曽駅の橋上駅舎化です。

橋上駅舎とは、線路やホームが地上にあっても、きっぷうりばや改札、駅務室が線路をまたいだ上にある駅舎のことで、電車の乗り降りのには必ず階段などの上下移動が必要です。

地上駅舎と橋上駅舎の違い

入曽駅の橋上駅舎の位置は、東西自由通路や東西の駅前広場に合わせて、ホームの北側(本川越寄り)のほぼ末端に計画されています。現在の地上駅舎から見ると、北に約100m移動することになります。橋上駅舎の位置に合わせて階段やエスカレーター、エレベーターも新しく造り直されます。

橋上駅舎化と既存設備の廃止

現在の入曽駅の駅舎や東口改札と西口改札は廃止・撤去され、新設する橋上駅舎の改札に一本化されます。鉄道事業者の事情で、車いす利用者への案内などのバリアフリー対応や、急な問い合わせの駆けつけ対応などの駅員のオペレーションを踏まえて、橋上駅舎化するときには改札を集約する方針があるようです(市のWEBサイトより)。2010年代に市民の要望で整備された現在の多機能トイレやエレベーターも撤去され、橋上駅舎に新設されるこれらの設備は全額市の負担になります。特に現在のエレベーターは国と県の補助金を受けて造られたものでしたが、この撤去と新設も市の負担になります。エレベーター設置の際に耐震補強されたこ線橋も撤去されます。

橋上駅舎の事業費を抑えるため、当初案(基本設計その1)から面積半減や設備削減を図った設計が西武鉄道で進められています[4]

西武新宿ゆきホーム本川越ゆきホーム橋上階
stairs
階段
1か所(北側)1か所(北側)ホームの列
参照
escalator
エスカレーター
2基
1基
(当初案から削減して
昇り降りのいずれか)
2基
1基
(当初案から削減して
昇り降りのいずれか)
ホームの列
参照
elevator
エレベーター
1基1基ホームの列
参照
credit_score
改札口
××1か所
(自由通路に接続)
wc accessible
多機能トイレ
××
storefront
売店
××
×
(当初案から削減)
設計中の橋上駅舎の機能(狭山市議会建設環境委員会の報告[4]に基づく)
橋上駅舎ができる計画の入曽駅ホーム北端(本川越側)を東側から見た風景
橋上駅舎ができる計画の入曽駅ホーム北端(本川越側)。階段やエスカレーター、エレベーターもこの周辺に設置される
橋上駅舎ができる計画の入曽駅ホーム北端(本川越側)を西側から見た風景
橋上駅舎ができる計画の入曽駅ホーム北端(本川越側)を現在のこ線橋から眺めた風景。エフズホール(青いビル)の左側、ホームの上の位置に橋上駅舎が計画されている
西口駐輪場(市営第11自転車駐車場)から見た入曽駅北側。写真中央右寄りのこ線橋やエレベーターがすべて撤去され、ホームの最北端(写真左)の上に橋上駅舎が新設される計画になっている。写真右の西口駐輪場もほとんどの範囲が西口駅前広場になる
撤去される計画の現在のエレベーター(西武新宿ゆきホーム)
撤去される計画の現在のエレベーター(本川越ゆきホーム)
撤去される計画のバリアフリー化された現在のトイレ
撤去される計画の耐震補強済みのこ線橋
撤去される計画の耐震補強済みのこ線橋(西武新宿ゆきホームから撮影)
撤去される計画の東口改札
撤去される計画の西口改札

5.複合商業施設の誘致

5つ目は、複合商業施設の誘致です。

入間小学校跡地のほぼ全域を対象に公募を行い、イオンの都市型ショッピングセンター「そよら」の出店が決まりました。この施設では、スーパーマーケットを中心に、ブックカフェやキッズパーク、生活雑貨、クリニックなど様々な種類の店舗が入居することが発表されています。茶つみ通り(県道8号川越入間線)とつつじ通り(県道50号所沢狭山線)、東口アクセス道路(区画道路1号)にそれぞれ車の出入り口が設けられます。周辺の車の交通量は大幅に増える見通しで、市の交通量予測(市公文書開示請求より)では1時間あたり最大で444台が出入りする計算になっています(平日17時台)。その影響で、周辺の道路では約10%交通量が増える場所もあります(市公文書開示請求より)。

また、区画の一部にははんしんが移転する計画で、駐車場を複合商業施設と共有します[5]

一方で、入間小のシンボルだった樹齢100年を超すケヤキは、市の募集要項に従い商業施設の責任で伐根・処分することが決められていて、後継木が育成されています。市は「移植しても根付く保証はない」としていますが、そのまま残す場合の木の健康状態(樹勢)については言及を避けていました(市への問合せより)。その後、2023年1月にイオンの責任と負担で管理することを条件に、出店期間中の伐根の猶予が発表されました。

複合商業施設の立地計画
入曽のシンボルだった入間小跡地のケヤキの木

出典

  1. 狭山市議会令和3年第2回定例会一般質問https://www.city.sayama.saitama.jp/gikai/teireikai/kakonoteireirinji/shitumonR3_2.html
  2. 市への開示請求文書『入曽駅周辺整備事業 基本計画』
  3. 狭山市議会令和4年建設環境委員会(第1回)
  4. 狭山市議会令和3年建設環境委員会(第3回)
  5. 『入間小学校跡地利活用事業者募集要項』https://www.city.sayama.saitama.jp/shisei/shisaku/tosikeikaku/irisoeki-syuhen/irumasyoukouboR30628.html

最新の情報が必要な方は、狭山市のwebサイト「入曽駅周辺整備事業 」もあわせてご覧ください。