今の改札口の存続要望

狭山市への公文書開示請求によると、現在の改札口存続の要望が平成30年(2018年)に5自治会会長連名で、令和3年(2021年)に7自治会会長連名でそれぞれ出されています。入曽地区には24自治会あるので、7自治会はその約30%に当たります。また、現在の東口改札存続を求める署名約400筆が1つの自治会から提出されています。さらに、現在の改札口存続と橋上駅舎化の中止の要望が、入曽まちづくりの会とは別の市民団体から市と市議会へ出されています。そもそも、「現在の改札口を残してほしい」という要望は自治会説明会やパブリックコメントでも多数出されていますが、市はこれらの意見には「意見として承った」や「西武鉄道の方針」などとしてその後十分な検討を行ったは不明です。

現在の改札口について寄せられたパブリックコメント

まちの衰退

入曽駅東口の商店街は、現在の東口を中心に広がっています。しかし、整備事業で駅出入口が北へ約100m移動し、商店街へも新設されるアクセス道路か茶農協跡地横の曲がりくねった路地(市道B299号)を経由しなければ出られなくなります。例えば、現在の東口に面する店舗を利用する場合、現在の改札口では20mの移動で済むところが、橋上改札口では150m以上も移動を強いられ、今までの商店街中心部への足が遠のくことは容易に想像できます。実際に、新河岸駅(川越市・東武東上線)は平成29年(2017年)に橋上駅舎化した際に駅出入口が約100m移動しましたが、狭山市議会の視察団が「旧駅前広場周辺の疲弊」を報告しています[1]。市は入曽の商店街について、新しい複合商業施設がイベントを開催することにより共存を期待していますが[2]、実効性は未知数です。

新東口から現東口や商店街中心までの道のり
新河岸駅と入曽駅の出入口移転の比較

利便性が低下する橋上駅舎化

改札の位置が本川越方向の端に移動するため、利用者によっては駅構内の水平移動距離も増えます。さらに、橋上化に伴って行きも帰りも必ず昇り降りを強いられます

現在、改札口や階段等はほぼホーム中央に位置しています。しかし、市の整備計画では橋上駅舎の位置が本川越方のホーム末端に移動します。そのため、普段ホーム中央付近を利用している人は約100m、西武新宿方付近を利用している人は約200m(10両編成の電車の先頭から最後尾)の水平移動を駅構内で強いられます。東口駅前広場は駅から少し離れた場所に整備されるので、車の乗降場所からはさらに95mほど遠くなります。離れた位置にある東口駅前広場は、一見近くなると思われがちな駅北側の利用者にとってもホームまでの道のりが長くなる場合があります。

道路からホーム中央付近までの水平移動距離の比較

さらに、駅舎は地上から橋上に変わるため、行き帰りともに昇り降りが必要になります。例えば、東口利用者で西武新宿方面に職場(学校)がある人は、現在は帰宅(下校)時にこ線橋を跨ぐだけですが、橋上駅舎化すれば出勤(登校)時も帰宅(下校)時も階段等を昇り降りしなければならず、垂直方向の移動は9m以上(普通の家の3階分)にもなります(一般的な橋上駅舎の高さ)。また、出勤(登校)時は東口、帰宅(下校)時は西口と踏切を経由といった、まったく昇り降りをしない駅の使い方もできなくなります。

東口利用者が都心に出勤(通学)する場合の昇り降りの回数(現在の駅舎と橋上駅舎での比較)

出典

  1. 狭山市議会建設環境委員会令和元年度行政視察報告書令和元年7月4日視察実施(川越市新河岸駅周辺地区整備について)https://www.city.sayama.saitama.jp/gikai/iinkai/kensetukankyo/kensetu_R1.html
  2. 跡地利活用事業優先交渉権者等の選定経過及び審査結果 https://www.city.sayama.saitama.jp/shisei/shisaku/tosikeikaku/irisoeki-syuhen/shinsakekka.html

最新の情報が必要な方は、狭山市のwebサイト「入曽駅周辺整備事業 」もあわせてご覧ください。